ムラタ・ヒナギクになってから初めて熊本に帰ったよ。
久しぶりに会えたばあちゃんは僕の活動をとても応援してくれていて、楽曲もMVもSNSまで見てくれている。僕の人生で一番いいところは家族愛に恵まれている所だと改めて思ったよ。
仮装大賞の話をツイートしているのも勿論知ってくれていて、『きっと喜んでるよ』と笑ってくれた。自分の他のツイートよりも拡散される事に少し嫉妬するぐらいだが、その娘に生まれてこれてよかったよ。今でも沢山の人に見てもらえてるなんて、思っても見なかったでしょう？
仏壇の下にしまってあったアナタの日記みたいなものを貰った。絶対に娘に見られたくないものNo.1だろうなと思いつつ文字を眺める。日記というよりは詩集という感じだね、今度この言葉を借りてもいいだろうか？
とあるページに愛の溢れる家族を作りたいと書いてあったね。時系列的に母と出会った後に書いたものだろう、僕が生まれる前のアナタの本音。いなくなってから見つけてしまったけれど、アナタが作りたかった家族に今僕はなれていると思うよ。僕は愛されているよ。父からも母からも、たくさん愛されているよ。
ただ、母にはとても迷惑をかけてしまっている。工業高校、短大に進学して就職に必要な資格を大量に取ったのに夢を諦めきれずに結局ステージにいるのだから。我儘で自分勝手な僕だが、母はやりたいなら自分でやりなさいと背中をいつも押してくれた。こんな娘でごめんね、ってたまに辛くなるけれど、弱ってるほうがきっと母を困らすから僕はもう少し夢を追い続けるよ。もう少し生き続けるよ。
父も母も目立ちたがり屋な人達だ。そんな両親から生まれた子だ、こうなるのもしょうがないだろうと神様は笑うだろう。どう？だからこそもっと目立たせてやろうと企んでいる。2人とも僕が目立ちゃ付いてくるだろ？みんなで僕らすげーんだぜって笑っちゃおうよ。それが僕なりの親孝行だ。
僕らみんなちょっと心が弱いけどさ、天才ぶるのだけはいっちょ前に得意だからこれからも天才で有り続けるよ。これもまた遺伝だね。洋画と洋楽が好きなのが遺伝したかったのだけれども。
とりあえず、ムラタ・ヒナギクになってやっと挨拶できたしCDも置いてきたのでたんと聴いてくれ。そうだ、タバコはマイルドセブン吸ってたんだね。今はメビウスになったよ名前。かわっちゃったからわからないでしょう、今度買っておくよ。また行くから待っててね。
家族の事は任せてよ。母も妹も元気だよ。僕らそれぞれ頑張ってるよ。貰った愛を返し続けるから受け取っておくれ。
じゃあまた来年、手紙を書くね。また一緒に夢で歌おう。
親愛なる父へ 娘より 2021.10.14
